制作楽屋話  ウナ介よ③

昨日歩いたこの道を

今日は遡って歩いていきます。

 

たった一日で、

なんと違うことでしょう。

 

前記ブログの続きですが、

昨日はウナ介を迎えて、

今日は弔い行くのです。

ウナ介は死ぬと、

すぐに白いモヤ(多分カビ)の

ようなものに全身が覆われ、

まるで 天ぷらの衣のようでした。

長い体はギリギリと巻きあがり、

私は それを大きめの

白い不透明ビニール袋に

入れてきたのです。

 

せめて

自然の川に、花川に

流してやろうと

思ったのでした。

 

バスに乗って三方原に向かいます。

花川上流で降りて、川に沿って

歩きます。

普段下流ばかり取材しているので

気づきませんでしたが、

花川も街中を流れる部分は

土手も川底も

コンクリで固めてありました。

 

上流の取材も兼ねて

いたわけですが

こんな状態じゃ

ウナ介を流せないな・・・

どこか良い所はないかな。

 

(しかし 死なせてしまってから

良い所と言っても・・・)

 

いつの間にか 川の左右には

運動公園が広がり

人の歓声が聞こえてきます。

私はウナ介を弔うつもりですが

傍から見ると

 

川にゴミ(!)を捨てる人、に

見えなくもない。

 

なんとなく人目を気にしながら

歩きます。

 

そうするうちに、よさげな場所に

行き当たりました。

 

土手も川底も土、

草木が生い茂り

澄んだ水底に こぶし大の

石ころが見えます。

アメンボがいくつも輪をえがいています。

まるで 童話の世界のようです。

 

ここだ!

 

私はビニール袋を開け、

ウナ介を橋の上から川へ

落としました。

 

ーーああ、どうして

生きてるうちに ここへ

連れてきてやらなかったんだろう。

いきなり自然の川へ放されても

そりゃ生きていけないだろうけど、

あんな死なせ方させるくらいなら

少しでも、自然の川に

入れてやればよかったのに。

 

私はウナ介が 死ぬほど

苦しんでたのに

気付きもしなかった。

スイカ食べてた。

のたうち回っているのを見て、

うなぎは さすが元気だなーとさえ、

思ってた。

 

なんで エアーポンプ

用意しなかったんだろう。

酸素玉で済まそうとした。

ウナ介に対して

アクリルケースが小さくて、

体がUの字に曲がってたのに

ほっといた。

そんなんで いられるわけないのに。

ちょっと考えれば

分かることなのに。

 

私は 生き物を飼うことをすごく

いい加減に考えてた。ーー

 

ウナ介の体は、

川に入ると

二重に渦を巻いていたのが

やわらかくほどけ、

体中真っ白に覆っていた

カビが まるで着物がぬげるみたいに

するりとはがれました。

そうしてまるで 生きていた時と

同じようにきれいになったのです。

 

ウナ介は銀色に光りながら、

ゆっくりと流れて行きました。

川底の石に ひっかかりひっかかり、

しかし けして止まらず、

少しずつ、流れていきます。

 

ウナ介、この川を下っていけば、

海に出られるよ。

 

ごめんね ごめんねウナ介

 

胸ビレの片一方が曲がったまま、

ウナ介は眩しい照り返しの下へ

入っていき

見えなくなりました。

 

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