絵本制作楽屋話
ワニの巻
ウサギときたら
次は ワニですね。
「因幡の白兎」が
書かれてある「古事記」
には、”ワニ”と
ありますが、
日本にワニは
いません。
(人の住むずっと前はいた。)
そんなわけで
古事記のワニとは
サメのことだろうと
言われています。
中国や朝鮮半島から
ワニの話が
伝わってきたものの、
ワニ居ないので
サメの大きいのを見て
「きっとこれがワニだ!」
と思ったのだろうと
言われています。
出雲の方言で
サメのことを
ワニと言いますし。
話の元ネタはともかく
(東南アジア起源説あり)
日本に伝わったからには
もうサメでしょう。
・・・と、考えては
みたのですが、
いや、ちょっと待てよ。
本当にワニで
描くべきか?
言わずと知れた
古事記は
日本最古の歴史書です。
太安万侶と稗田阿礼が
コツコツ二人で書いた
というイメージが
ありますが、
本当のところ
どうだったのでしょう。
日本最古の歴史書、ということは
日本最初ということです。
しかもオーダーしたのは
天皇!
勅命です。
これはもう、
国家プロジェクトですよね。
いまでいうジャクサの
ハヤブサ計画とか
カミオカンデみたいな
雰囲気の。
おそらく
それはそれは
優秀な人材が
多数、関わって
いたと思われます。
そんな 国家の頭脳たちが
うっかりと
サメとワニをごっちゃに
するでしょうか?
いったい
どういうつもりで
「ワニ」と
書いたのだろう。
本当は日本に
ワニがいないことも
知ったうえで
敢えて
「ワニ」
と書いたのでは?
ぁぎゃーーー・・・
もう、ワニにするか
サメにするか
ハンパなく
悩んだのです。
(絵的にはサメのほうが
描きやすいですが、
そういう問題でもないしな~)
決め手になったのは、
そのワニの「書かれ方」
でした。
たとえば
海の上に一直線に
並び、ウサギを渡す
のですが、
その間
じっとしてなきゃ
ならないですよね。
これは もしサメなら
ツラい。
なぜならサメは
常に泳ぎ続けて
いなければ、
呼吸ができない
生き物なのです。
ウサギが飛び来るまで
息を止めて
じっと待つ・・・
ツラい。これはツラい。
さらに、ウサギを岸に
放り出せるほど
陸地に近づくのは
どうか。
うっかり乗り上げる危険が
ありますね。
イルカだの、シャチだの
海の哺乳類なら
何とか戻れますが、
魚の場合、
かなりリスキー。
下手すりゃ
そのまま干物。
お話の都合とはいえ・・・
サメで書くのは
かなり不自然です。
どちらの場面も、
ワニなら楽に
できます。
ワニにしよう。
またまた、
上野動物園に
お世話になることに
しました。
海を泳げるワニ、
というと
イリエワニでしょうね。
世界最大種の一つです。
やはり東京まで
いかないと。
爬虫類館に、
一頭、イリエワニが
いました。
絵本には それこそ
たくさんのワニを
描きましたが、
モデルは
たった一頭の
彼です。