制作楽屋話   緑の魔境

行けども行けども 緑の海(畝)

ここは茶畑。

絵本「なみこぞう」を作っていた時、

遠州名物をたくさん入れようと

思っていました。

お茶とかみかんとか ウナギとか

徳川家康とか。

お話の舞台は 晩秋、

稲刈りが終わって

秋冬番茶の季節です。

 

茶どころではない方はピンとこないかもしれませんが、

お茶の木は常緑樹です。一年中緑。

初夏の一番茶摘みから始まって、

秋冬四番茶摘みまであります。

そして冬には、花を咲かせる木もあります。

(茶の木に花が咲くのは、

その木が年取ってきた証拠

なので、あまりいいことでも

ないですが・・・)

ともかくも取材です。

なるべく本物見て描かなければ。

菊川駅から新東名の高架橋めざして

ひたすら東へ歩いていきます。

グーグルマップで見たら、

そのあたりに見事な茶畑が広がっていたので。

初めて歩く道をわくわくと

一人歩いていきました。

茶の木というのは、

その土地の形なりに根付く

ものです。

どういうことかというと、

斜面なら斜面、平なら平

その土地の形に生えるのです。

茶畑は地面の形を反映しています。

逆にみかん畑は、あまり極端なことは

できないらしく、

土地を平らにならして

段々畑のように作ってあったのを

見たことがあります。

茶の木は 人が行けるところなら

そのまま植えてますね・・・

この谷も、この丘も

みんな茶の木で覆いつくされ、

生き物のようにうねる畝が

続いていきます。

こっちの線路際から

あっちの山の端まで

みんな茶畑。

時々農機具小屋がある程度で

ほぼほぼ緑。

 

・・・こんなところで

道に迷ってごらんなさい。

ちょっとあっちの風景

見てみたい、と思ったのが

運の尽き。

前も後ろも右左、茶畑。

 

茶畑無間地獄。

 

しかも人っ子一人いない。

農家って朝も夕も早いらしい。

偶然 人家に行き当たり、

生還することができましたが、

茶畑なめちゃいかんと

思った取材旅でした。

 

この時、茶の木の根元に何か

干し草というか藁みたいなのが

敷いてあるのに気づきました。

その時はなんだか

よくわからなかったのですが、

まあ、有るんだから絵本に

そのまま描きこんで

おきました。

後日、それが「茶草場農法」として

世界農業遺産に認定されたことを

知りました。

茶畑の周りで刈った草を

茶の木の根元や畝の間に

敷いておくのだそうです。

なんと静岡の伝統農法で

しかも掛川やら島田のあたりにしか

残ってないそうで、

立派な遠州名物でした。

か、描いといてよかった。

 

 

 

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